2015年9月

 

一花一鉢からの花LIFE

  • 十五夜ということで、普段はあまりやらない寄植えを作りました。
    紅ギツネの周りにアルテラナンセラ栞、セイヨウイワナンテン、リンドウモモズキンチャン、ノボタン、五色カズラ黄金錦、ケイトウキモノをびっしりと植えこみました。ところが、家族からは、ススキの種が舞って困るなどの苦情を受けてしょんぼりしてしまいました。
    あらためて第三者的に観察すると、花期の異なる花たちを植えていますし、1年草と宿根草、室内でないと冬越しできない花などまったくバラバラです。花や葉の色で季節感を出そうなどと思ったのが失敗です。
    それでもアルテラナンセラと黄金錦の組み合わせはいいよね、などと自己満足しています。問題はいつ花鉢を崩すかです。すでにリンドウは花を終えてしまいました。花癖があるというのは自分でいうのもなんですが、始末の悪いものですね。
  • プリンセスドゥモナコの枝が手折れてしまったので花だけ水に浮かべました。改めて一花だけでも楽しめるものだなと思ってます。

 

花と季節感 9月26日(土)

  • 季節感をもっとも感じさせてくれるのは気温や日照時間、季節の始まりごとの長雨に違いありませんが、生活のなかでは何でしょうか。衣服、食事、年中行事などが当てはまるのではないかと思います。
  • 花(植物)とお考えのかたも多いだろうと思います。
  • ところが花屋の季節感は季節がひとつ前にずれています。やっと秋になったと思ったら、パンジー、ビオラ、メラコ(プリヌムラメラコイデス)、シクラメン、ポインセチアが流通して、もう既に年末商戦のことを考え始めています。
  • おとぎやでもシクラメン、ポインセチアを販売しています。お客様が「もうクリスマスみたいね」と会話していらっしゃいました。季節感を先取りした感じがするのでしょうか、よく売れています。プレゼントになさるお客様もいらっしゃいます。
  • 服飾業界も同じではないでしょうか。8月にはもう夏の服がありません。秋色の衣服で棚が埋まっています。そういえば雑誌の10月号は9月に発売されますね。
  • 食べ物にも季節感がなくなったとよく言われます。温室で栽培された野菜や果物が流通して、冷凍保存された魚や遠洋で獲れた魚が店に並び、海外で生産された日本向けの食材も輸入されて、現代の消費社会では食事に季節感がほとんどなくなっています。
  • 園芸植物や生花も、食品業界と似たところがあります。正確にいうと、どの季節でもどんな花でも生産可能なのです。しかし、花をお買い上げくださるお客様には、それぞれの花ごとの季節感があるので、また花卉業界もそうした季節感を演出しているので、ほぼ決まった時季に決まった花が出荷されてきます。
  • ここでおもしろいのは、花(園芸植物)のほとんどが外来種だということです。たんにヨーロッパ原産のものに限らず、例えばコスモスはメキシコ産というように、南米産、アフリカ産、オーストラリア産というように世界中の原種が園芸植物に改良されてきました。
  • 18~19世紀の植民地帝国主義の時代に、ヨーロッパのプラントハンターと呼ばれる人々が、王侯貴族や大商人のために珍しい花々を世界中から集めてまわったのです。
  • 日本の植物がヨーロッパに渡って明治以後、洋風に変化して戻ってきたものもあります。アジサイが渡欧して帰国したときハイドランジアに変わっていました。菊は中国原産ですが、日本から渡欧し帰国したときマムに変化していました。バラには元々、つるバラがなかったそうです。中国バラや日本の野生バラとの交配で、つるバラが生まれたという話もあります。
    写真は春秋と2度開花するアジサイ”霧島の恵”です。花色はピンクから赤紫へと変化していきます。現在販売中です。「アジサイは梅雨の時季」という季節感からでしょうか、あまり売れてません。わたしは5月、花壇に植えましたが今、美しい花を咲かせてくれてます。2度花を見ることができて、なんか得をした気分で楽しんでいます。
  • いずれにしても、高温多湿の夏があって冬は氷点下になる日本の気候に本来はあまり適していない植物を植え花咲かせているのですから、園芸植物の季節感というのは、かなり私たち日本人に刷り込まれた思い込みが含まれているように思います。
  • マリーゴールドや赤いサルビア・スプレンデンスは今が真っ盛りに大きくなって花開いていますが、夏の植物というイメージが強くありますから、どうしても引き抜いてパンジー・ビオラやガーデンシクラメンやメラコやジュリアンを植えたくなります。
  • ところが、そんなことはおかまいなしに、花が望むままに植え続けている人もいます。それはそれで、花の性質を考え十分に育つ環境のもとに可愛がっているのですから、奥御祐筆栗原信充のように花好きなのかもしれません。季節感を選ぶか、花の自然を選ぶのか迷うところです。
  • 休眠状態で夏越しした原種シクラメンが花盛りで、普通のシクラメンも花開いてしまったわたしの花鉢ですが、花好きとしては、花の自然のままにまかせてやろうと思います。花が咲いている季節感でなく、花を育てる季節感を花好きは味わうのではないでしょうか。
  • シクラメンの原産地は、地中海沿岸部や中近東で、冬でも気温が10℃以上、夏は温度が高くても湿度が低い土地です。日本の気候と真逆の気候が原産地の植物を、どう生産し流通させるのか?最初に作り始めたのは岐阜県の伊藤孝重さんという方だそうですが、マッサン並みの苦労をしたのではないでしょうか。そして、「空気が乾いている冬季、暖かく暖房されている室内で栽培してもらう」という結論を得たのかもしれません。そして、今や冬の花の女王”シクラメン”という季節感が定着したのです。
  • シクラメンの原種には春に葉が出て開花する春咲種と、夏は球根だけで休眠し、秋に開花してその後葉が出る秋咲種の2種があるそうです。写真の原種系シクラメンは、開花株を買ったのが2月か3月頃でしたが、本来は秋咲種で元に戻ったのかもしれません。ちなみに普通のシクラメンの原種は春咲だそうです。

 

一花からの花LIFE 9月15日(火)

  • シュウメイギクの生花がとても美しいのでピンクのヒペリカムと一緒に投げ入れてみました
  • おとぎやは生花1つからでも気軽にお買い物できる花屋でありたいと思っています

 

「秋の花・10月まで咲く花」店頭にて配布中

  • 「秋の花・10月まで咲く花」をお客様の参考となるようプリント両面にまとめ、レジ近くに置きご自由にお取りいただいています。ネットでもご覧いただけるようにしましたので、下記のリンクをクリックしてください。
  • 秋の花・10月まで咲く花

 

マッサンのおかげです 9月7日(月)

  • NHK連続テレビ小説「マッサン」のおかげで、ジャパニーズ・ウィスキーが大変優れているということが世間一般に知られて本当によかったと思います。また、ニッカ党のわたしとしては、サントリー(ドラマでは鴨居商店)との違い、本物のスコッチウィスキーにこだわるニッカのミッション(使命)がよく伝わって、溜飲が下がる思いがしました。
  • というのも、わたしたちが学生だった1970年代の半ばはウィスキーというと、たいがいサントリーのホワイトを飲んでました。サミー・デービス・Jr.がコンコン・チコン・コン・チコンとボトルをたたきながらスキャットするTVCMをまねながらJAZZ喫茶で騒いでいました。ですからニッカは格下というイメージが、わたしたち世代のおじさんたちにはあるのです。さすが宣伝のうまい鴨居商店…
  • ところが、およそ十数年前、シングルモルト余市12年が、世界のウィスキーコンクールで最優秀賞に輝いたという広告を全国紙の一面全部をつかってニッカが掲載したのです。びっくりしました。サントリーでなくあのニッカが…と思いました。それで興味をひかれ、大枚を払って自費購入、飲んでさらに驚きました。生涯で最もうまいウィスキーに出会ったからです。
  • NHK連続テレビ小説「マッサン」のせいで、その余市10年、12年、15年、20年というシングルモルトのイヤーズボトルがなくなってしまいました。マッサンのせいで余市は売れに売れて、もととなる原酒がなくなったというのです。「マッサン」を観られたかたはお分かりと思いますが、ウィスキーは樽の中で5~6年以上は寝かしたものでないと飲めないのです。
  • そこで、ニッカは宮城峡と余市の両方をつかったバンデッドモルト・ウィスキー『竹鶴』を主力商品にすることにしたのだそうです。竹鶴もうまい酒ですが、余市には余市独特のフレーバーと味があるのです。
  • こうしたニッカファンの気持ちが通じたのか、9月1日から「余市」「宮城峡」のシングルモルトを販売してくれています。
  • 飲んでみて確かに余市でした。ヨード臭が少なく逆にスモーキーフレーバーの強い香りに熟成したミズナラの樽の香りが混じり、のどの中では余市独特の果実のようなさわやかな甘さが味わえました。イヤーズボトルではありませんが、いい酒です。
  • ちなみに、わたしはここ数年、ご近所のタイラ酒店からしか買ってません。タイラさんのシングルモルトコレクションは富士地区随一だと思います。こんなにそろえて大丈夫かしらんと思うほどのラインナップです。もちろん、ニッカやサントリーのシングルモルトやバンデッドモルトもそろっています。
  • タイラさんにあるウィスキーで皆さんにお勧めしたいのがニッカの「カフェグレーン」です。ちょっと高価ですが、うまいです。グレーンウィスキーというのは、大麦麦芽以外の小麦やトウモロコシなど様々な穀物からつくられるウィスキーのことです。これらグレーンウィスキーは原酒として、幾つかの蒸留所のシングルモルトと組み合わされブレンディドウィスキーになるのが常識でした。
  • ところが、ニッカは石炭直火焙煎のスチールポットでつくるグレーンウィスキーだけのボトルを売り出したのです。そもそもスコットランドのグレンフィディック蒸留所がシングルモルトを発売したのが1960年代でした。当時は、バランタインやホワイトホースなどブレンディドウィスキーがよく飲まれていてモルト単体の酒が売れるはずがないと誰もが思っていたそうです。冒険でしたが、これがよく売れて今のシングルモルト全盛期につながっています。
  • グレーンウィスキー単体での発売もやはり冒険です。どこもやっていない。ニッカのチャレンジスピリットと自らの技術力への自負をよく反映しています。
  • さて、「カフェ・グレーン」はヨーロッパで爆発的に売れたのです。ボトルのデザインも都会的かつシンプルで優れています。日本で評判にならないところはニッカならではですね。サントリーはこれをまねてグレーン単体の「知多」という酒を出してうまく宣伝しています。さすが鴨居商店‼両企業の違いが判ってこれもおもしろい。

 

 

花が好きですか?それとも愛していますか?Ⅲ 9月4日(金)

  • 江戸時代に日本の園芸文化が花開きました。江戸の染井に園芸職人・庭師の町ができて、椿やモミジなどの花卉の新種がたくさん産み出されました。今も残るその代表作が幕末に開発された「染井吉野」です。ところが、この園芸文化の中心は、庭に植える花木よりも、むしろ花鉢ものでした。
  • 染井には、サツキやツツジの花鉢がいっぱいに並べられ、それは見事だったそうです。また、幕府の旗本・御家人も花鉢の生産を副業としていました。江戸時代のお侍の出勤は2日勤務の後1日休みで、暇な時間がたっぷりありました。また、屋敷は与えられ、わずかな俸禄はもらえてても、無役のため生活が苦しい御家人もいました。そうしたお侍の副業の一つが鉢ものの生産だったのです。
  • 例えば伊賀お庭番鉄砲組100人衆は、ツツジの栽培で生計をたてていました。時季になると新宿百人町はこのツツジの見物客でたいへんな賑わいだったそうです。忍者が実は園芸家だったとは驚きですね。
  • 盆栽は中国からの輸入文化ですが、こうした鉢もの文化は日本独自のものです。今も使われている鍔(つば)が上についた植木鉢は江戸時代に、園芸家の発案により作られたものです。
  • この鉢もの園芸文化は、庭を持たない庶民にも広まりました。江戸市中には,庶民の家、長屋の玄関先の軒下に自慢の鉢植えが置いてあったそうです。将軍家から町人まで広がった鉢もの園芸文化ですが、これをけん引したのは、奇品家(きひんか)と呼ばれたコレクターの人々でした。
  • 『江戸奇品解題』浜崎大(幻冬舎ルネッサンス)2012年刊によると、花卉園芸を生業とする植木屋とは別に「ふ入り」や「葉変わり」などの植物を山野で見つけ種や実生から育てる好事家である奇品家ともいうべき人々がいたと言います。この奇品の伝統はオモトやイワヒバなどの古典園芸に受け継がれたものもあると思いますが、浜崎さんは奇品は明治になって失われたと書いています。
  • ツバキの葉変わりとふ入りの図『草木奇品家雅見』文政十年(1827)増田金太
    ツバキの花でなく葉に価値があるところが奇品ということです。確かにこうした美意識は現代日本人にないものです。
  • こうした本当に珍しい奇品のコレクターですから、奇品家は情熱的に奇品を大切にしたといいます。浜崎さんが「第4章 奇品への情熱と愛情」であげている2人を浜崎さんの文章を引用しながら紹介します。
  • 市ヶ谷に住む志賀宋庵は、朝から夜更けまで奇品を愛してやまず、時のたつのも忘れてしまうほどであった。宋庵の愛妾も鉢植えを好み、奇品に理解があったが、あるとき、試しに「私と奇品のどちらを深く愛していますか」と尋ねると、宋庵は何のためらいもなく「我は奇品を妻とし汝を妾とする。汝への愛の深さは奇品には及ばない」と答えたのだった。その答えを聞いても愛妾は顔色ひとつ変えず、宋庵を恨みもしなかったという。(『江戸奇品解題』浜崎大p125より抜粋引用)
  • 人間よりも植物を愛する人が、江戸時代にもいたのです。
  • 高坂宗碩は千駄ヶ谷に住み医術を業としたが、奇品を心より愛し、患者を診るより奇品の世話をするほうが忙しいというほどの奇品家であった。植物を育てていると、水やり、植え替えなど日頃体を動かすので気血のめぐりも良く、また美しい葉を見て目の保養にもなるので、精神は爽快、病気の食い入る隙もないという。宗碩にとって健康を増進し病気を予防する極めつけの方法は、奇品を真心込めて育てることであった。こうした考えから宗碩は、子や孫を医者でなく植木屋にしたという。(『江戸奇品解題』浜崎大p129より抜粋引用)
  • ガーデンセラピーを考え実践していたドクターが江戸時代にいたのです。わたしも園芸をやるようになってから、毎年ひいていた風邪をひかなくなりました。土いじりは何らかの免疫力強化の作用があるかもしれません。
  • 次は「第8章 大衆化した幕末の奇品」から幕臣栗原信充を紹介します。
  • 『金生樹譜別録』は幕末に刊行された、鉢植えの育て方、接ぎ木の方法、暖室(むろ~江戸時代の温室)などを図入りで詳しく説明し、さらに、諸国の名木の図を載せ略伝を記した実用的な総合ガイドブックである。編者は、幕臣で奥御祐筆を務めた古実研究家の栗原信充である。(中略)
    下図は江戸時代温室の図『金生樹譜別録』巻1(国立国会図書館デジタルコレクションより)
  • 巻一の巻末には「凡て物を愛すると好(すき)とは同じことのようなれど少し違うなり。愛はなはだしくしてはかならず偏り(かたより)になり。好盛(さかり)にしてはかならず妙に至る。愛する人はただその花様の美を喜ぶのみにして其花木の性(しょう)を考えその養にこころをつくすに及ばず。好人(すくひと)の心はずっと替わったもの。まず第一に草木の性をよく考え、山にあるもの野にあるもの各々その土拵えに心をつくし、又、暖国と寒国との気候を丁寧に懸考し、南海の草を東海の暖室に養い、彼をして東海たることを忘れ本国のままに繁昌させるはさりとて好の妙神に通ずというべし」と説く。花を愛する人は多いが、そのうち何人が鉢植えの妙に至るのだろうか。(『江戸奇品解題』浜崎大p231と244より抜粋引用、全文現代仮名遣いに直しました)
    下図はその原本(国立国会図書館デジタルコレクションより)
  • 愛するのでなく好きになりなさい。そして植物の性質を学びその用土や日当たり温度管理にも気をつかえば、鉢植えの極意を極めることになる。というのです。
  • わたしは園芸のほんの初心者ですが、この文章を読んで好人(すくひと)の道を歩みたいと断然思いました。