2015年12月

啓翁桜

  • お正月用生花として当店で販売している桜はケイオウ桜です。わたしは最初「慶応桜」で慶応年間に産まれた桜の品種だと勝手に解釈していましたが、本当は「啓翁桜」だそうです。
  • 啓翁桜は、昭和5年に久留米市山本の良永啓太郎さんが、中国系のミザクラを台木にし、 ヒガンザクラの枝変わりとして生み出したものだという説。シナミザクラを台木にコヒガンザクラを接いだところ、誕生した品種(接木変異)という説。支那桜桃(しなおうとう)とヒガンザクラを交配して作られたとの説。と各説あるようです。
  • また、啓太郎さんが作出したものから変異した他の品種も啓翁桜と呼ばれているとの説もあります。
  • いずれにしてもお正月の目出度い桜を最初に作り出した良永啓太郎を称えて、啓太郎お爺さんの桜、つまり啓翁桜ということは確かなようで、皆さんけっして慶応大学の桜ではありません。
  • さて、この桜、つぼみが次々と開花してくれて、生けておくと2月後半まで楽しめたように記憶しています。数に限りがあります。お早めにお買い求めください。

冬の花

  • お客様に「冬も咲いている花は何ですか」と聞かれると返答のしようがありません。「冬のあいだずっと咲き続ける花」という意味でおっしゃっていると思うからです。
  • 「パンジーとビオラでしょうか」と答えていますが、基本的に冬、花は咲きません。”花”は受精のための器官ですから、植物にとって冬は、開花に適切な時期ではありません。
  • 冬は受粉を助けてくれる昆虫がほとんどいません。
  • また、開花と結実のとき、植物は最大のエネルギーを使います。ところが、冬は日光が斜めに射して弱いので、光合成によって十分な栄養を作り出すことが難しい。そのうえ気温が低いため、生体活動を活発に行うには他の季節以上にエネルギーを必要とします。
  • と、わざわざ説明するまでもなく冬のあいだ、植物は冬休みなのです。でも咲いてる花もあるじゃないかというご意見もあります。ごもっとも。
  • 園芸種の花は人間が繁殖を手伝っているので、極端にいうと受精の必要がありません。また、人間は植物をだまして、わざわざ冬に開花させたりしています。
  • それでも氷点下の気温がずっと続くと植物は傷んだり枯れたりします。というのも植物細胞の70~90%が水でできているからです。厚い表皮や細胞内の水分が凍らないような構造をもっている植物だけが強い寒気のなかでも休眠しないで活動することができます。
  • 実は氷点下で植物体内の水分の一部は凍っているのだそうです。その分、細胞の濃度が高くなって細胞自身は凍りにくくなるそうです。そうして細胞が休眠状態になります。また花芽から水分が他に移動して花芽を守る植物もあるそうです。細胞内の糖度を高くして凍化を防ぐ植物もあるので冬野菜は甘くておいしいとも言われます。
  • 雪国でパンジーやビオラが咲いている風景を想像することはできません。ですから「冬のあいだずっと咲いている花」を特定することは難しいのです。
  • 今、店頭に並んでいる花はしばらく咲いてくれます。どうか、その花たちを楽しんでください。と申し上げたいと本当は思っています。
  • できれば、花壇には春に開花する植物を植えて、花を楽しむのは少しがまんしてみませんか。そうすると春の開花が楽しみになって、開花のときの喜びはひとしおです。
  • 店頭に並んでいる花は鉢植えや寄せ植えにして、霜の当たらない軒先、北風の当たらない南向きの場所に置いていただくと長く楽しむことができます。そのうえ今年は暖冬です。わが家の鉢たちはかなり元気です。少しご紹介します。
  • 台所の南側の軒先にある花たちです。ひな壇のプランターは昨年までみなパンジーとビオラでしたが、今年はストック、ちょっとお高い値段のパンジー、そしてプリムラマラコイデス(ウンナンサクラソウ)です。
  • ほかの鉢は、サントリーのオステオスペルマム”キララ”、同じくサントリーのサイネリア”セネッティー”、そして去年購入して夏越しできたサイネリア(30㎝くらいの丈になりました)。ちなみにサイネリアの本名は「シネラリア」です。「死ね」という語が連想されるので日本でだけ名前が変更されています。
  • 「趣味の園芸」11月号をまねしてつくった寄せ植えです。ユリオプスデージー、メラレウカ、ヒデンス、ガザニア、オキザリス名月の恵み、黄色いビオラを植えました。
  • プリムラジュリアンは昨年丸い鉢に植えたのが今年も開花してくれています。円形の釣鉢?には花が大きめのプリムラポリアンサをぎゅっと詰めてみました。
  • ガーデンシクラメンも昨年植えたプランターで咲いたり咲いてくなかったりしています。
  • 暖冬のせいでダリアやノボタン、オキザリスも元気でいます。わたしは植物の生育状況を確かめたり調整したりするのが楽しみですので、基本的に寄せ植えは好みません。でも一度やった寄せ植えの花が衰えると別の花に植え替えて、ずっと寄せ植えが続いている鉢もあります。秋につくった寄せ植えのギンギツネを抜いてハナカンザシとビオラを植えました。テイケカヅラと咲いてたのはペンタスでしたが今はネメシアとミヤコワスレです。トレニアの替わりはサクラソウとキンギョソウです。今咲いている花でも十分楽しめます。継ぎ足しの寄せ植えもおもしろいものです。
  • 椿の一鉢ももう3週間くらい楽しませてもらってます。今ある花で冬もしばらく、花好きの楽しみは続きそうです。

草花の冬支度”マルチング”お済みですか

  • 暖冬だと思って油断していました。富士宮市粟倉1区二又にも霜が降りました。10月に植えたジギタリス、ルビナス、ホリホック、カタナンケ、矢車草などの葉がうっすらと白くなる日が続いています。本当ならもうマルチングを済ませていなければならないのに、朝寒くてやる気が起きません。
  • 植物の根元を腐葉土やワラで覆ってやると、地温の低下を防ぎ、霜が降りても土が凍ることがなく霜柱が立ちません。マルチングは、秋に植えて春の開花を待っている植物たちの防寒着です。
  • バラの大苗は”お馬のたい肥”と腐葉土でマルチングをしてあったのですが、ワラを敷く予定が終了していません。他の植物は、ほとんど手がついていません。水曜日の休日をあてにしていたのですが、天気予報は午後から雨とのことで実に困っています。
  • しかし、マルチングはガーデナーの義務であり責任ですから、大好きな植物たちのためにがんばるつもりです。
  • おとぎやには腐葉土2種と敷き藁がご用意してありますのでマルチングにお使いください。
  • 実はお客様にお教えいただいたのですが”お馬のたい肥”が保温効果抜群なのだそうです。毎冬、この”お馬のたい肥”でマルチングをなさるということで先日ご購入くださいました。おそらくたい肥に住んでいる微生物の生命活動でごくわずか発熱作用が起きているのではないでしょうか。
  • この”お馬のたい肥”は当店の隠れた人気商品です。牛糞よりもよいとおっしゃってご購入くださるお客様が大勢いらっしゃいます。この近辺では当店にしかないとのことで、わざわざ遠方からおいでいただくお客様もございます。
  • ”お馬のたい肥”はなんとJRA(日本競馬協会)が作っています。サラブレッドの食料は稲わらに限定しているとのことで、その有用成分が働いているのかもしれません。稲わらにはバラの黒星病を予防する成分が含まれていると「バラ有機栽培」に関する本に書いてありました。”お馬のたい肥”にも同じ効果があるだろうと、わたしは勝手に推測しています。
  • 春咲球根は12月には休眠から覚めて活動を始めます。球根が凍るのを防ぐためにも、マルチングは効果があります。わたしは園芸を始める以前からカタクリの栽培をしていました。カタクリの埋まっている表土は、その辺に落ちている落ち葉で覆っていました。というよりも勝手に落ち葉が積もってくれていました。その落ち葉を突き抜けてカタクリの花は咲いてくれます。自然というのはよくできていますね。
  • 本当は他の草花もその辺に落ちている落ち葉でマルチングしてもいいのかもしれませんが「落ち葉には雑菌が含まれているので完熟した腐葉土が望ましい」といろいろな本やネットに書かれていますので、書き添えます。

お正月に梅の花を咲かせましょう

  • 店頭に梅鉢をたくさん並べました 万葉の昔から日本人は春を告げる花として梅花を愛でてきました 多くのお客様にお買い求めいただき、お客様のお正月を寿ぐことができたら素晴らしいなと思っています 梅の開花は初心者のわたしでもできたくらいですので、それほど難しくないように思います ぜひお試しください
  • 今年のお正月に咲かせた白梅(トウジ)です
  • 梅は、寒い冬が過ぎた後、湿気が多く暖かくなった春に、花を咲かせる植物です。
    そこで、梅の鉢を、霜に2~3回あわせて寒さを感じさせた後、暖かい室内に移動します。そして、蕾を霧吹きなどで湿らせます。
    梅に開花期が来たと錯覚させる作戦です。
    室内ですので、鉢が乾燥しないように注意してください。また、エアコンの送風に当てないようにしましょう。
    そして、花が終わったら屋外に戻してください。

植物と毒物 12月3日(木)

  • 11月30日、栃木県宇都宮市で、別居中だった陸上自衛官の夫を殺害しようと焼酎に毒物を入れたとして、その妻が逮捕されたとの報道がありました。妻は、10月29日、別居中だった陸上自衛官の夫の自宅で「トウゴマ」から抽出した猛毒の「リシン」を台所にあった焼酎の紙パックに混入したそうです。また、キョウチクトウに含まれる毒物も焼酎に入っていたとの報道もありました。
  • トウゴマの種子からヒマシ油を搾った残りかすに、糖タンパク質のリシンが含まれているそうです。古代エジプトでは少なくとも6000年前から栽培され、下剤や光源用として利用されていたそうです。
  • リシンには強い毒性があり、種子を数個食べただけで死に至る可能性があります。トウゴマの種を飲み込んだ場合、おう吐や腹痛、下痢などを引き起こし、重症のときには血が混じります。血圧低下、幻覚やけいれんを引き起こし、摂取量が多ければ、数日後に肝臓、脾臓、腎臓の機能が低下し死に至ります。
  • キョウチクトウは街路樹や生け垣などによく用いられ、トウゴマよりも比較的身近な植物ですが、日本でも死亡例が報告されている毒物を持っています。全株、特に白色の乳液、種子に、有毒成分である強心配糖体オレアンドリンなどを含み、成人の経口致死量は葉5~15枚になるそうです。
  • 誤って口にすると、口内の痛みやしびれ、吐き気、嘔吐や下痢(ときに血が混じる)、めまいなど、ひどい場合はけいれん、意識障害を引き起こします。また、乳液が皮膚につくと湿疹などの皮膚炎をおこし、生木を燃やした煙にも有毒成分が含まれるといいます。
  • 上記の引用・要約は『園芸有毒植物図鑑』土橋豊2015年4月4日(淡交社)によるものです。同書には「第2章 死亡例・事故例が多い園芸植物」「第3章 主に食中毒を起こす植物」「第4章 主に皮膚炎を起こす植物」「第5章 ペット(イヌ・ネコ)で問題となる植物」があり、植物例をあげその特徴・有毒部位・症例について詳しく書いてあります。ユニークでおもしろい本です。
  • 「第2章 死亡例・事故例が多い園芸植物」としてイチョウ、ディフェンバキア、スパティフィラム、グロリオサ、スイセンの仲間、スズランの仲間、フクジュソウ、夕顔、アジサイ、ジギタリス、カロライナジャスミンなどが上げられています。しかし、これら植物を口中に摂取することが事故を引き起こしますので、基本的には安全です。注意したいのは幼い子供、ペットによる摂取です。また、これら植物と野菜とを混植することで起きる誤食もあり得ますので、花壇に野菜を植えないことで防げる部分が大きいようです。上記書を参考にした考え方です。